鉄人の山、育みの渓
故郷大井川をはじめ、多くの渓流での釣りは本日が最終日。今年も3月からの7か月間で、数々の美しい渓魚と出逢うことができた。残り1週間となった先週火曜日は、来年の解禁に備えた確認のため、6月に行って以来の、大井川の馴染みの渓へ独り出かけてみた。
家を出たのが8時を過ぎ、時間帯通行止めの影響もあって、渓への到着は10時半を回る。爽やかに晴れた空の下、頭上が開けて明るい流れのポイントを、BHラッシーで打っていくも反応が無い。のんびりと30分ばかり遡行した頃、ようやく流れの芯の脇から、7寸越えグッドコンディションのイワナが出てくれた。しかしその後も反応は薄く、2尾の中型イワナを追加したところで、退渓点へたどり着く。そこの枝沢を、ちびイワナを釣りながら林道まで上がり、午後2時過ぎで終了とした。
林道を歩いて下っていると、ザックを背負った男性が、背後から軽やかに追いついてきた。「釣れましたか」と話しかけられたので、車までの15分ほど、色々と楽しく会話させていただく。自分は釣りはやらないが、今日は地元の山をぐるりと歩いて来たとの事。そんなやりとりから、その人が富山湾から駿河湾までを、日本アルプス越えで何度も駆け抜けた、有名な「アルプスの鉄人」であることがわかってびっくり。とても明るく気さくな方で、握手にも応じてくれる。車に乗り込む間、先に歩いていた鉄人を追い越す際には、笑顔で手を振ってもくださった。ぱっとしなかった釣果に、もやもやと冴えない気分でいたところ、元気を分けていただいた思いがする、佳い一日になった。
中1日置いた26日木曜日は、恥ずかしながら66歳の誕生日。山の神様がお祝いしてくれないかなぁという助平根性を抱いて、独り大井川を遡った。車窓から入る、朝のひんやりした空気を浴びながら、快調に車を走らせ、8時半に車止めゲートへ到着。自転車に乗り換えて少し走り、お気に入りの支流の入り口に着いた。そこには、先行者らしき自転車が一台置いてあったが、構わず入渓する。
空は晴れて風も穏やかな絶好の釣り日和。やや増水気味の流れからは、小指サイズの0歳児イワナが何尾も釣れてきてしまう。しかし、このサイズが沢山居てくれるということは、また来シーズンも期待できるという証し。美しい渓魚を育んでくれる流れに、感謝の念を抱いた。
しばらく釣り上がると段々とサイズアップし、ちょうど12時に、8寸オーバーの良型がロッドを曲げてくれ、ようやく満足する。
午後は、もう一回り大きな魚を釣りたいなと思いつつ先に進んだが、暫くして先行していた餌釣り師に追いついてしまった。話しかけてみれば、大きいのは出なかったけれど、それなりに釣れたとのこと。もう少し先のポイントまでやって帰ると仰るので、登山道でう回して、そのポイントの上流側へ出させてもらった。
そしてぽつりぽつりと中型イワナを釣り、上部を樹が覆っている小さなプールに辿り着く。枝に引っかからないよう気を付けて、BHラッシーを落とすと、手前に少し流れてラインが止まった。魚信か?と思いアワセを入れてみると、ロッドがバットから曲がるような強烈なファイトが始まる。これはデカイ、バラシたくないと慎重になるも、少し強引に寄せて無事ランディング。ドキドキしながらメジャーを当ててみれば、33cmある。今シーズン、一度も出会えなかった尺イワナを、最終釣行でプレゼントしてくれた山の神様に、心から感謝した。
そしてその50分後に、また幸運がやってきた。少し痩せ気味だったけれど、今度は32cmのイワナ。時間はまだ2時半と早かったけれど、この尺イワナをもって、今シーズンの閉幕とした。
大井川よ、これからも美しい渓魚達をたくさん育んで、
また来年も楽しませておくれ!
Recent Comments